東京高等裁判所 昭和52年(行コ)69号 判決
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控訴人 バイエリツシエ・モートーレン・ウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
右訴訟代理人弁理士 伊藤武久
外一名
被控訴人 特許庁長官
熊谷善二
右指定代理人検事 島尻寛光
外三名
〔主文〕
原判決を取消す。
被控訴人が昭和四九年六月一日特許庁昭和四八年実用新案登録願第五一七八七号実用新案登録出願についてした不受理処分を取消す。
訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
【判旨】
二そこで、本件不受理処分に原告主張のような違法があるかどうかについて判断する。
1 <省略>
2 そこで、本件第二次変更出願が本件第一次変更出願の補正として受理されるべきものであるかどうかについて検討する。
(一) 前記一の当事者間に争いのない事実及び<証拠>によれば、昭和四八年四月二六日の本件第一次変更出願の願書には、優先権を主張する旨の記載が欠如しているが、同年四月二八日の本件第二次変更出願の願書には、優先権を主張する旨の記載があり、この点以外は、右両変更出願の願書、明細書の記載は全く同一であること及び控訴人は、後者の願書を提出すると同時に、本件第一次変更出願の取下書を提出したものであることが明らかである。
(二) 右の事実及び弁論の全趣旨並びにこれらにより推認しうる次の事実、すなわち、優先権の主張を伴う出願をした者は、その後その出願の変更をする場合には、その変更出願についても、優先権の主張をするのが通常であること、控訴人は、右出願変更の手続をした後、その願書に優先権主張の旨の記載が欠如していることに気づき、ただちに(右変更出願の日から二日目に)優先権主張の意思を明示するための手続を講じたが、たまたま、その方法が本件第二次変更出願の願書と本件第一次変更出願の取下書とを同時に差出すという誤解を招きやすいものであつたという事実によれば、控訴人は、本件第一次変更出願にあたつては、当初から優先権の主張をする真意を有していながら、おそらく不注意によつて、その願書に優先権主張の記載を欠落させてしまつたものであり、そこで急ぎ、本件第二次変更出願の願書と本件第一次変更出願の取下書との同時提出によつて、当初の出願変更にかかる出願の効力を維持しながら、この優先権主張の欠如した変更出願を、優先権主張を明示した変更出願に訂正しようとしたものであることが客観的に明らかであり、他にこれと反対の事実を認めるに足りる証拠はない。このような特別の事情のもとにおいては、本件第一次変更出願は取り下げられることなく(取下書の提出も通常の意味の取下ではない。)存続し、本件第二次変更出願は、本件第一次変更出願に対する補正(優先権の主張の補充)手続であると解するのが相当である。
被控訴人は、本件第二次変更出願が本件第一次変更出願の補充となりうるためには、本件第二次変更出願の願書が本件第一次変更出願を補充する表示となつていなければならない旨主張するが、本件第二次変更出願の願書において、本件第一次変更出願を補正する旨明示されていなくても、前記のような事情のもとにおいて第一次変更出願を補正する趣旨が十分読み取れる(この補正の趣旨を明示すべく補正する余地もある。)から、これを補正として取扱うのが相当であり、被控訴人の主張は理由がない。
被控訴人は、補正が認められているのは、願書に添付した明細書または図面についてのみであるから、優先権主張の補充をすることは補正の対象となりえない旨主張するが、前記改正前の実用新案法第五五条第二項において準用する前記改正前の特許法第一七条の規定によれば、明細書、図面のみならず、手続一般について広く補正が許容されるべきことは明らかであり、優先権主張の補充も補正の対象となりうるものであり、右主張は理由がない。
また、被控訴人は、右のような補正を認めれば、他の先願者等の権利を害する結果になり不合理であると主張するが、本件原出願に元来適法な優先権の主張を伴うものであり、右補正が前記のように本件第一次変更願に際して当然に存した優先権の主張についてこれをいわば明示する意味を有するものである以上、右補正を認めたからといつて何ら先願者等の権利を害することにはならず、右主張も理由がない。
(三) 優先権の主張が変更出願と同時にされるべきものとされる点について考えるに、出願の変更にかかる出願が、もとの特許出願とは別個の新たな出願の形式をとつてされるものであるとしても、本件の場合のように、もとの特許出願についてすでに適法な優先権主張の手続がされており、前認定のとおり、出願人がこれを受けてその主張の利益を変更出願についても亨受しようとする真意(客観的にも認められる。)を有しながら、たまたま変更出願の願書にその旨の記載を欠落させてしまつたものの、その後遅滞なくこれを補充明記しようとするものであり、しかも、それが第三者に不利益を及ぼさないと認められる場合においては、これを補正の手続によつて、変更出願のときに遡つて(補正は、元来、補正される対象がされた時点に遡つて、その効力を生ずるのが建前である。)、明らかにすることが許されるものと解するのが相当である。
3 以上によれば、本件第二次変更出願は本件第一次変更出願の補正として受理すべきものであり、その余の点について判断するまでもなく、本件不受理処分は違法として取消されるべきものである。
(荒木秀一 石井敬二郎 橋本攻)